今回読んだのは人工知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」のプロジェクトディレクタを務める新井紀子さんの著書「AI vs.教科書が読めない子どもたち」です。帯には人間が勝つために必要なことという文言もありますが、目を引いたのは教科書が読めない子どもという部分。内容や感想をまとめておきます。
AIが身に着けることができないのが「読解力」。しかしこの読解力が足りない人間が増えてきている。読解力がないとAIに仕事を奪われしまう。だから読解力を付けなければいけない。読解力を養うには短期的な方法はなく、日々の勉強や家庭での会話が重要。また何歳からでも読解力を養うことはできる。
AI vs.教科書が読めない子どもたち目次
第1章 MARCHに合格-AIはライバル
- AIとシンギュラリティ
- 偏差値57.1、AI進化の歴史
- YOLOの衝撃
- ワトソンの活躍
- AIが仕事を奪う
第2章 桜散る–シンギュラリティはSF
- 読解力と常識の壁-詰め込み教育の失敗
- 意味を理解しないAI
- Siri(しり)は賢者か?
- 奇妙なピアノ曲
- 機械翻訳
- シンギュラリティは到来しない
第3章 教科書が読めない–全国読解力調査
- 人間は「AIにできない仕事」ができるか?
- 数学ができないのか、問題文を理解していないのか?-大学生数学基本調査
- 全国2万5000人の基礎的読解力を調査
- 3人に1人が、簡単な文章が読めない
- 偏差値と読解力
第4章 最悪のシナリオ
- AIに分断されるホワイトカラー
- 企業が消えていく
- そして、AI世界恐慌がやってくる
内容・あらすじ
第1章第2章では現状のAI技術に関する説明とAI技術の限界が書いてあります。
そもそもAIとAI技術というのは別のもの。
AIはSFに出てくるような人間そっくりな人工知能。
AI技術はその研究過程に試みられた技術的アプローチです。
本書ではAI技術をAI、AIを本来の意味でのAIと区別して使っています。
AIを使って東京大学の入試試験に合格できるか?というプロジェクトを行ったそうですが、無理だということが分かったそうです。
しかしその挑戦の過程で研究されたAI技術は非常に高度なものでMARCHレベルの大学にならセンター試験の偏差値的に合格が可能なレベルに達して達しています。
東大レベルになると高度な読解力が必要になります。この読解力をプログラミングするのが非常にむつかしいらくし、現状ではコンピュータに読解力をプログラミングすることは不可能だそうです。
人間とAIがはっきりと違うのが読解力です。
人間には読解力があるからコンピュータにとってかわられることはないのですが、ここで大きな問題が見つかりました。
なんと日本人の読解力が低下しているのです。
AIに仕事を奪われるという話がありますが、それは読解力が必要ない仕事に関してです。
しかし読解力を持っていない人が多いのでコンピュータに追われる人が増えるのではないかと、警告を鳴らしています。
感想
ちょっと衝撃的な統計が載っていました。
目次にもあるように25000人を調査した結果、読解力不足だと思われる人が3人に1人いるそうです。
私自身読解力があるかといわれると、胸を張って「はい」と言えるか不安です。
読解力を確認するためにSRTというテストがあり、本書にも例題がいくつか載っています。
私も解いてみましたが、何問かは間違えてしまいました・・・
Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある。
この文脈において、以下の文章の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから一つ選びなさい。
Alexandraの愛称は( )である。
①Alex②Alexander③男性④女性
この問題を正解できた中学生は38%だったそうです。
正解は①ですが一番多かった回答は④だったそうです。
愛称の意味が分からず飛ばして読んでいるのではないかと思われます。
アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。
この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから一つ選びなさい。
セルロースは( )と形が違う
①デンプン②アミラーゼ③グルコース④酵素
私はこの問題間違えてしまいました。正解は①のデンプンですが、ほかの大多数の人と同じように③のグルコースを選択してしまいました。
文章を正確に読んでいないことが分かりました・・・
私にはまだ小学生の子どもがおりますが、低学年であり読解力に関してはまだまだこれからです。
しかしスマホにハマってしまい動画中毒のような感じです。読解力を養えるかどうか不安です。
有益な動画も多いのですが、子どもが見たがるのは正直アクセスを稼ぐために作られた知的レベルの低いものが多いのです。
このままでは我が子も読解力不足に陥りそう・・・(小学校の先生からは勉強についてこれてないと言われました( ノД`)シクシク…)
著者は読解力を左右するものを明らかにするためにアンケート試みたそうです。
生活習慣、学習習慣、読書習慣などかなり網羅的なアンケートを実施したそうですが、どの項目も能力値との相関性が見いだせなかったそうです。
まとめ・行動指針
著者の行ったアンケートでは読書習慣と読解力に相関関係は見いだせなかったそうですが、本当は関係あると思います。
問題はどのように読んでいるか、ということ。ただ漠然と読むのではなく、何が書いてあるのかをしっかり理解するように丁寧に読むことが大切です。
最近は速読がもてはやされますが、精読する力こそが大切だと考えます。